「紘平先輩がそんなこと聞いて来たの?」

「うん、いつだったか……ああ、あの二年の夏の合宿の時だったかな」

「ちょ、何でそれ早く言ってくれなかったの」


「忘れてた」
 
 けろっとした回答に、力が抜ける。
 
 こういうところは昔から変わらない。


「『あの二人、仲がいいよな』って言うから、そうですねって答えたけど」

「なんでハッキリ付き合ってるわけじゃない、って言ってくれなかったの」
 
 それではいかにもカップル認定されたようだ。

「いや、付き合ってるのか、っていうように聞かれなかったから」
 
 わざわざ言うのも変かなって、と成美は言う。
 
 
 それに大和と仲が良かったのは事実だ。
 
 しかし紘平が、周りの噂をそのまま受け取っていた可能性はある。


「いまさらいいじゃない、そんな昔の話」
「そうだけど……」
「大事なのは、今でしょ」
「今……そうだね」
 
 少なくとも今は、紘平の近くにいることが出来る。
 
 自分の気持ちほ伝えられる距離に。


「何かあったら報告してね、楽しみにしてる」
 
 友人の楽天的な笑顔に、みのりは薄く頷いた。
 


 彼との間には、とっくに『何か』が始まっている。