昔から変わらない成美の物言いに、みのりは懐かしさを覚えて微笑んだ。
 
 今、成美はここから駅二つほど離れた街で、旅行会社に勤め頑張っている。
 
 成美とは社会人になってからも、時々やりとりをしていて、時間が合えば、飲みに行ったりして近況を報告していた。
 

 こういう時間があると、日々の緊張や疲れから癒される。


「最近、何かニュースあった?」

前菜を口に運びながら成美が言う。

「うーん……ニュースっていうか……」
 
 みのりは迷ったが、紘平のことを切り出した。


「えっ、あの紘平先輩が今ここに泊まってるの?」
「成美、声が大きい!」
 
 みのりは手のひらを振って成美を制止させる。


「すごい、すっごい偶然、ていうか、運命?」

「何言ってるの、偶然に決まってるでしょ、仕事で泊ってるだけだもん」

「だってずっと片思いしていた先輩が、素敵なセレブになってまた現れるなんて、ドラマみたいじゃん」
 

 確かにそうかもしれない。
 
 自分がここに勤めていなければ、そして紘平が今の仕事に就いていなければきっとこういう再会はなかっただろう。


「そうかー噂で社長になった、とは聞いてたし、たまにネットとかで話題になってたからすごいなとは思ってたんだよ」
 
 さすが我らが部長、と成美は嬉しそうに笑った。


「うん、昔からすごい人だと思ってたけど、今もだよ」

「先輩、やっぱり今でもカッコいいの?」

「え……あーうん……」
 
 そういう言葉が出てくると、一気に大学時代の友人とのコイバナをしている気持ちになった。
 
 脳裏に紘平の姿が浮かび、そして昨夜までの回想がよぎる。


「何、今の間。そして、顔が赤いんだけど」
「そんなこと……」
「もしかして、紘平先輩となにかあった?」
「な、何も……」
 
 どもる感じが余計怪しく見えてしまう。

「意識しまくってるじゃん、みのり変わらないなー」
 
 成美は楽しそうに言い、メインの料理を食べていく。

「もしかして、このチャンスに賭けてる? 大学時代のリベンジ、とかいって」

「リベンジって何」

「昔も片思いしてるだけでいいって何も出来なかったじゃん、見ててもどかしかったよ」

「だってそれは……」
 
 紘平には昔から、たくさんのファンがいた。
 
 自分なんかが、告白などしていいとは思ってなかった。


「先輩モテてたし……彼女もいたっぽいし」
 
 あれだけの素敵な人がフリーな訳ないと、今も昔も思っている。