向かい側に座る紘平のグラスと合わせ、赤ワインが揺れた。


「じゃ、再会に乾杯」
 

 みのりが選んだレストランは、ミシュラン星付きの有名なフレンチレストランだった。
 
 創作フレンチがお元する店内は、今話題ということもあり若い層の客も見える。
 
 コースと、紘平お勧めだというボジョレーを即決した。


「いい雰囲気だな」
「ありがとうございます」
 
 悩んで選んだ甲斐があった。
 
 ホテル周りの飲食店なら大体頭に入っている。
 
 この店は、一度来てみたかった。
 
 できれば……男性とデートで。といつも思っていた。


「まだ仕事モードか?」
 
 みのりの言葉遣いや態度が、そう思わせるらしく、紘平は少しだけ不満げだ。


「そうですか?」
「ああ、カタいっていうか……」

「緊張してるんです」
「どうして」
 
 どうしてって……そんなの紘平と一緒だからに決まっている。
 
 本人は気付いてないかもしれないが、店に入った時から周りの注目を集めている。
 特に女性の。
 
 紘平の容姿の良さが目立つせいもあるけれど、それだけじゃない。

 今や彼は、大学の憧れの先輩ではなく、ネットや雑誌にたびたび登場する若き社長で有名人なのだ。

 芸能人を見るような視線を投げてくる女性もいた。