——“ キヨ ”


それは私のひいお婆さんにあたる人物だった。

性格がきつく、みんなの嫌われ者だったというひいお婆さんは、病気になったのを機にこの家から隔離され、ひとり離れの家で養生し、誰にも看取られないまま息を引き取ったというのだ。


「……そんな、 お婆さん……」


鮮明に残ったままの、あの狂おしいほどの表情……


……どんなに辛かったろう……


……どんなに悲しかったろう……


誰にも気付かれず、看取られなかったという状況が、さっきの私と重なって、また涙が浮かんでくる。


……きっと分かって欲しかったんだ……


そこにいるのに、いないかのように振る舞われる、そんなやり場のない悲しみを……


……だから私に、 疑似体験を……



「……でもねえ〜、 そんな話……」

「……とても信じられないっていうか……夢でも見たんじゃ……」


「夢じゃないよ!」


おばさんたちに私は言う。


「だって見てこれ! これも! こっちも!」


私の足首にはくっきり手形が残っていた。

それだけじゃない。

途中しがみついた家中の柱には私が爪で引っかいたキズあと。

そして爪の間には木くずが挟まっていたのだから。