「鳥越君。」
「はい。」
ふいに声を出す社長に一瞬びくっとする。
「今から行くところはね、
ノゾミがまだ小さかった時に、ユキコと3人で行ったコテージなんだよ。」
「ご家族で旅行された場所なんですね。」
「しばらく・・・1人でそこで過ごしたい。」
「・・・はい。」
「佐竹には・・詳しいことは言わずに、
“鳥越君に送迎してもらう”とだけ伝えた。
だから誰にも何も言わないでくれないか?」
「分かりました。」
「必ず戻るよ。
私は・・・銅収堂の社長だからね・・・。」
「・・・。」
「心の整理が付いたら、また電話をする。
その時は・・・佐竹と一緒に迎えに来てくれるかな。」
「必ず行きます。
佐竹さんも僕も、社員みんな、
社長を待っています。」
「・・・・ありがとう。」



