隣の殺人鬼





「奥様の話は絶対にしないように。」


「奥様ですか・・?」


「世間話をするのは構いませんが、奥様の話題は絶対に出さないようにお願いします。」


「どうしてですか?」



「・・・社長が認めた君であれば私から話しておいて構わないでしょう。

今から話す事は他言無用でお願いします。」


「はい。」




「社長の奥様は、12年前自殺未遂を起こしました。」



「え・・?」



「社長と奥様は大学の同期で、

ご在学中から約4年の交際を経て25歳で結婚されました。

相思相愛の、とても仲の良いご夫婦でした。

しかし、結婚から3年後、
娘のノゾミお嬢様が生まれてから、
奥様が少しずつ変わってしまった。」



「どういうことですか?」



「君も知っての通り、銅収堂は代々、田村一族が社長を継いでいる。

現社長の田村エイジ様も、先代でありお父様のシンタロウ様から社長の座を継いだ。

つまり田村一族には銅収堂を継ぐため、男の子が必要でした。

しかし生まれてきたのは女の子であるノゾミお嬢様。

社長ご本人や先代は全く気にしていなかったようですが、

奥様はかなりお気を悩まれたそうです。」



「2人目は出来なかったんですか・・?」



「当時は先代が社長で、エイジ様は人事部長のお立場。

多忙も重なったのでしょう。

2人目はなかなかできず、奥様は思い悩んでいたようです。

そして12年前、エイジ様が36歳の時、奥様は車が多く行き交う道路に飛び込んだ。」