隣の殺人鬼





前に、会社で徹夜して青木さんが眠ってしまった時に寝言を呟いていたけど、

あれはご両親の夢を見てたのかな・・。


酔いもあって涙腺が緩んでいるのか、青木さんの話を聞きながら目頭が熱くなった。


当の本人は全く泣く気配もなく淡々と話していたけど・・。




「さっきの飲み会で私が、
“名前で呼ばれるのを嫌がっている”
って話になったけど、

本当の理由は、耳の奥に残っている、お父さんとお母さんが私を呼ぶ声をかき消されないようにしたいからなんだ。

だから友達にも、“アスカ”って呼ばせてない。」


「・・すみません。変な気を起こして名前で呼ばないよう気をつけます。」



「フフッ、ありがと。
こういう話、誰かにしたことなかったんだけどなぁ・・。」


「大丈夫ですよ、
誰にも言わないですから。」


「ありがとう。」


「まぁ・・・お酒が入ると大体僕は忘れちゃいますし。」


「・・じゃあ鳥越君と飲んでる時に仕事の話はしないようにする。」


「ハハハ、そうしてくれると助かります。」