オレの細胞は生きている。

生物学的な意味でも哲学的な思想でもない。
文字通り生きているんだ。

薬指「おい、親指、近づくな。暑い」

親指「仕方ないだろ、こいつがピースなんてするから」

そう、それぞれが意思を持って。

親指「だりー早く撮り終われよなぁ」


――聞こえてるんだよ!!

カシャッ

この時の彼女との写真、オレは頬をひきつらせていた。


自分の体のパーツたちの声が聞こえるようになったのは、ほんの数日前。

最初は空耳かと思った。
オレの足の裏が「疲れた!」と言ったのが始まりだ。

恐怖は感じなかった。自分の体の一部だからか、オレは彼らをすんなりと受け入れてしまった。

ただ、基本的に彼らは不満を言うから、オレはあまり気分が良くない。

脹ら脛「痒い!イライラする!」

ほら。

赤く腫れた虫刺されの痕が脹ら脛にぽつりとできている。

悪かったよ、掻けばいいんだろ!?
まったく、こっちの台詞だっていうんだ。