小さな神社だが流石に元日ということもあり手水舎に水が流れていた。
鳥居の横にある門松にやっと正月だという現実味を感じる。
本殿の前に並ぶテントには揃いの法被を着た地元の人達がいた。
「あけましておめでとうございます。」
簡単に挨拶を済ませて参拝に向かう。
流石に夕方という時間で人はまばらにしかいない。
鈴を鳴らして2礼する。
手を合わせてから澪は神様に話しかけた。
「あけましておめでとうございます。
昨年は大きな怪我もなく過ごさせていただきありがとうございました。
今年はより一層夢に向けて頑張ります。」
本来は神様は願い事をするものではない。
でも、澪は続けて言った。
「あいつが今年も笑って過ごせますように。
本年もよろしくお願い致します。」

澪は満足気に一礼して踵を返す。
足場の悪い神社に重かった足が少しだけ軽くなった気がした。
大好きなあいつが笑っててくれれば頑張れる。
「今年も沢山一緒に騒いでバカやって、偶には真面目な話もして頑張ろうね。」

澪は参道を駆け下りた。
また一年が始まる。
でも今までとは違う、想像もつかない日々。
1人じゃ見れない景色、あいつと仲間と新しく出会う人らと見られたらいいな。