お互い夢を叶えるまでは付き合わないって宣言してるから世間的に言葉に表せるような関係じゃないけど、今は一緒に遊んで話して笑っていられればそれでいい。
「幸せすぎて嘘みたい…。」
去年までの年末年始が嘘みたいに楽しかった。
愚痴も不安も全部受け止めてくれて、泣いて笑ってこんなにも満たされた時間はない。

澪は仲の良い家族が羨ましかった。
愛想をつかした反面、何処かで世界に嫉妬してた。
「帰ろ…。」
多分帰っても誰もいない。

電車に乗ってスマホの写真フォルダを開く。
あいつとの2ショットの写メをみて心がホッとするのを感じた。
まだ一緒にいた温もりが残ってて1人でも寂しくない。
地元の駅に着けば顔に刺さる風が痛い。
陽も傾き始めた16時前。
新しい靴で歩き疲れて足はすでに痛かった。

「初詣、行けなかったな…。」
澪は少しだけさっき参拝せずに引き返したことを後悔した。
せめて氏神様にはご挨拶しに行こうと痛む足を引きずって少しだけ遠回りをする。