「柚はうまいな、そういうの」
「そ、そういうのって…」
陸はシートに寄りかかりながら、僅かに顔を傾けてこっちを見た。
その表情が、また私の心臓の音を大きくして
今さらなんだけど、すごく恥ずかしくなる。
「オレさ、柚がそういうこと言ったり、オレを誘うような仕草とったり。それが多分わざとなんだろうなって思ってても、勝手にドキドキして身体全体が反応してさ。そのくせそれを行動に移そうと思っても、そんな勇気もなくて」
「陸…」
それは違うよ。
私の方が、そういうこと言う陸にドキドキして、それに満足して
結局自分の本当の気持ち、何も言えてないんだ。
そ、それに…
たしかにいつもの仕草とかは計算が入ってるけど、さっきのはそういうのとかじゃ…
「柚……」
ドクン…っ……
小さく私をそう呼んで、陸は私の頭に手を置いた。
上からゆっくり撫でられるようにその手が流れると、後ろ髪に触れていく感触がすごく心地よくて
信じられないくらいに、ドキドキする。
だって、初めて陸に触れられたんだもん。
全身が心臓になったんじゃないかと思うくらい、体中が揺れて
今すぐ陸に抱きしめられたくて。

