一言も口を開かないまま、街の中を走っていく車の中。
何か言わなくちゃ、そう思うほどに言葉が詰まって出て来ない。
私はずっと気まずくて下を向いてた。すると
「ひゃっ!」
ポケットに入れていた携帯が急に震えて。
私は緊張の空気をまといながらそれを開いたんだ。
恵美からのメール…
『ごめん柚。先に酔っちゃった(笑)でも吐いたら楽になったし心配しないでね。それと、なんか竜介がぶつぶつ言ってたけど私が説教しておくから。柚は陸と仲良くね〜♪』
「恵美〜…」
自分のいる場所と全く違う恵美のテンションに、少しだけ気持ちが楽になる。
私はそのまま恵美にメールを返した。
『仲良くできればいいんだけど…。私明日魂抜けてるかも』
だってこんな空気今まで感じたこと無いんだもん。
このまま陸と離れるなんてイヤだし。
もっと一緒にいたいし、もっと近づきたいし。
私がぽちぽちとメールを打ってると、陸がぼそっと呟いた。
「柚はメールなんてできるんだ。今のオレにはそんな気持ちの余裕もないのに」
「陸……」

