+小悪魔恋愛+


私は陸の顔を見ることもできなくて足下を見続ける。

静かな空間。

一瞬空全体に音がなくなった気がした。




「…いいよ」

「えっ……?」



陸の言葉に、思わず私が聞き返した。

何が…いいの?



「別にそんなの聞けなくていいよ。聞きたくもないし」



どくんっ…



「りく…」



なんて言った?

陸今なんて言った?



竜介も言葉が出ずに目を丸くしてて、私は自分が立ってる感覚さえなくなってて。



「柚、帰るよ」

「う、うん……」



陸は私に車に乗るよう促した。



陸……。

エンジン音を車内から確認すると、耳が遠くなるような感じが頭に広がる。

入って来た時と同じで、スッと駐車場を後にする陸の車。



ドキドキが、なんだか苦しいドキドキに変わっていって。

ねぇ、陸。

私動揺して上手く聞き取れなかったのかな。

よくわかんないけど、なんか悲しいこと言われた気がする。



隣の陸を見上げることもできなくて、私は黙って助手席に座ってた。