「陸…!」



車の窓が静かに開いたと思ったら、中から切なげな陸が顔を出して来た。

陸は目の前のハンドルを抱えながら、私の顔をじっと見つめて。



「……オレ、カッコ悪い?結局こうやって柚のこと迎えに来ちゃうとことか」



不安そうにそう言うの。

外からの風を受けて、黒いパーカーに栗色の髪がさらっとなびく。

前髪の間から見える優しそうな瞳で、もう私の息なんて止まっちゃそう。



「カッコ悪いわけ…無いじゃん」



陸の真っすぐな表情を見たら、もう胸がきゅんきゅんなりまくって。

私はつい、泣きそうになってしまった。


陸〜……

でも、こんな涙目で陸の気持ち誘ってるとか思われるのもイヤだし。

私はフッと後ろを見る振りをして涙を拭いた。

そしていつものように強気で



「まぁ、遅すぎて待ちくたびれたけどね。おかげでキスマークまで付けられたしさぁ」



なんて言ってやったんだ。

そしたら



「は?」



い?

いや…えっと〜

陸の目は、なんかいつもみたいにやきもちの目じゃなくて、すごく鋭い視線になっちゃってて。



「…なんて、冗談だけどね。そんなの付けられるわけないって」



陸の反応に慌てて首をすくめてみたけど、



「ううん、ついてる。そこに」



ぎくっ!

自分ではどこに付いてるのか分からないキスマークは、しっかり陸の目に入ったらしく。



「いやぁ、チガウチガウ。たぶん虫さされ。ははは」