「あ、いや、僕もそんなんじゃなくて、璃音、僕にも助けてって言わないから。僕、ちゃんと助けてって言われたの、1回だけですし。」









「え?そうだったの?……まぁ無理もないね……」









「弟さんのことですか?」









「……ま、機会があったら詳しくね。龍太君も疲れたでしょ。璃音そろそろ退院だろうから、また来てやって。」









「あ、はい。じゃ、また。」








少し、あからさまに話題を変えてしまっただろうか。




あの感じだと、璃音の昔のこと、少しは知ってるみたいだけど……









龍太君を見送ったあと、寝ている璃音を起こさないように聴診だけして、俺は医局に戻った。




退院や入院というものは、普通は保護者との面談の上で決まることが多い。




決めるのはこちらだとしても1度保護者と面談はする。




だが、俺は璃音のお母さんとまともな面談をしたことがない。




璃音は今のお父さんともお母さんとも血が繋がっていないから、二人ともどこか遠慮してるところもあるのだろう。




そして璃音もそれを感じ取っている。




だから、生まれた頃から知っている俺に基本は全て委ねてくれているのだ。




やりやすいにはやりやすいが……いつかそれが裏目に出ないことを祈る。