龍太君が帰ったあと、俺は璃音の隣に腰掛けた。




……龍太君、泣いてたな。




そりゃこんな状態じゃ無理もないか……。









「いい加減起きろよ。どんだけ寝んだ璃音。いい目覚まし時計でも買ってやろうか。」









もちろん突っ込んでくれるわけでも返事をするわけでも笑うわけでもない。




璃音の顔色、表情は全く変わらず、ただそこに存在してるだけだった。




ずっとこうしてるわけにも行かないので、俺は少ししたら璃音の病室を離れた。




医局に戻ると駿太が頭を抱えていた。









「……ねぇ。なにやってんのこんなとこで」









「あ、蒼!!!!!!丁度良かった!仕事終わらないんだよ!助けてぇ……」









「……助けるかバカ!お前の仕事だろうが。自分でやれ!」









……少しでも心配した俺が馬鹿だった。




と独り言をこぼし、自分の席につく。









「そんなカリカリすんなよ蒼。……璃音ちゃんのことだろ。そんなんで不安定になってたらお前の身が持たねぇーよ。」









「……璃音は特別だ。」









「医者が私情を挟むのはいかがなものかと思いますが?」









「分かってるよ。俺にはほかの患者もいるんだ。……でも璃音は……他と同じってわけには行かないんだよ。」









「まぁほかの業務に支障をきたさないなら文句も言えないか……。あんま根詰めるなよー。」









そう言うと駿太は淹れたてのコーヒーを置いて、医局から出ていった。