できる限りのペースで走ろうとしていたら、隣に美有が来た。
「璃音、ほんとに大丈夫?」
「……多分。ケホッ。……大丈夫。」
「……あんま大丈夫じゃなさそう。」
「大丈夫だよ。ケホッケホッ……。先行ってて。」
「……分かった。ダメだったら途中でやめなよ!」
「ありがとう。」
そう伝えると美有は先に走っていった。
自分でもこの咳と呼吸音は怪しい気がする。
でも……走らなきゃ。
私にだって出来るから。
私は普通の人になれるから。
大丈夫……大丈夫。
「ケホッ……ケホッケホッ……ゲホッゲホッ……」
自分に出来ることをやってるだけ。
無理なんてしてない。
大丈夫だよ。
大丈夫。
龍太、私走れるよ。
……走れるんだ……
「ゲホッゲホッ……ヒュ-ヒュ-……ゲホッゲホゲホ」
やばい。
そう自覚した時には遅かった。
苦しくなる呼吸。
溢れ出す涙。
私は耐えられずにその場にしゃがみこんだ。
遠くの方から聞こえる声。
今の私には、それすら聞き取れなかった。
「璃音!!!!!!璃音!!!!!!」
遠くから聞こえる誰かの慌てた声を最後に私は意識を手放した。