ここからわずかに離れたところに、ファーストフードの店がある。
同じ駅前なのに、ヨネのコンビニエンストアとは客の入りは全く違っていて、たくさんの人で溢れていた。
「まだ来てないみたいだな」
約束の時間から五分が過ぎていた。
奥の席に澪はヨネと並んで腰掛けた。お互い緊張して言葉を交わさなかった。
大丈夫だろうか。
今更ながら、部外者のあたしたちが勝手にこんなことをしていいものかと後悔する。
でもこのまま黙って見ていてもきっと奈美は同じ過ちを犯すに決まってる。
それに相手の男も。
そうなる前に止めなければならなかった。
「健二、さんですか?」
ヨネの言葉に澪は顔を上げた。
そこにはいつか奈美に見せてもらった写メールに映っていた男が立っていた。
薄い眉を寄せて、睨みつけるその顔は明らかに誰が見ても不機嫌だ。
思っていたより彼は背が高かった。ヨネも178センチと長身だがそれよりも越えている気がした。
そしてTシャツの上からでも分かるがっしりとした体型。
また一つ、額に汗が流れた。


