ねえ、杏奈先生。


どうして先生は彼にあんな顔をさせるの?


毎晩見ていたあの夢の意味が今分かった。



「彼の時間を返して」


あれはあたしの想いだった。


先生じゃなくて、あたし自身の儚い想い。





彼の笑い声が教室内に響き渡る。


奈美はいつもと同じように、ずっと鏡を見て髪を整えている。


恭介の席は午後になっても空のまま。


時間は確実に進んでいる。

ゆっくりと。


ただ、ポケットの中にある壊れた携帯電話と彼の中にある時間だけは、あの日からずっと止まっていた。




ねえ、杏奈先生。


お願いだから、彼の時間を返して。




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