「そもそも佐藤がひどい事を言ったのが悪いんだよ。奈美ずっと見てたもん」

「そうなの?」


彼女は深く頷いて話し始めた。


「佐藤、アンナ先生のこと悪く言ってた。
ほら、一時期ヨネがアンナ先生と付き合ってるって噂が流れたじゃない?
でもそれは恭介のことがあって二人が一緒にいるようになっただけでしょ?
アンナ先生もそう言ってたし。
もう終わったことなのに、佐藤ひどいんだよ。
ヨネにあの噂のこと本当のところはどうだったんだってしつこく詰め寄ってて。
それでヨネが黙っていたら、佐藤が突然アンナ先生のこと悪く言い始めてさ。
先生は淫乱教師とか男子生徒に色目使ってたとか、あんなのヨネが怒って当然だよ。
奈美だって殴ってやりたいぐらいだった」


それを聞いて、澪はやっと納得がいった。


「先生はそういう人じゃねえんだよっ。何も知らねえお前が軽々しく先生の悪口言ってんじゃねえよっ」


ヨネが佐藤に投げかけた言葉が、今頃になって澪の胸に突き刺さる。

静かに黒板を見つめるヨネの背中が、小さく感じた。