レンジの音がチンと鳴った。

冷凍ピザが焼けているのを確認すると、澪はそれを部屋まで持っていき、テレビの前で腰掛けた。

電源を入れて、チャンネルを何度も変える。

一人しかいない静かな部屋に、笑い声がよく響き渡るバラエティー番組へと落ち着いた。

それから思い出したように、ピザを頬張りながら鞄の中を手探りする。

取り出したそれは、ブラックの折りたたみ式携帯電話。


「そろそろ返さなくちゃな」


実はきょう、学校で奈美が「ヨネの携帯が繋がらない」と話していたのだ。

ヨネはどこかに無くしたと答えていた。解約はしたそうで、今は新しく買うつもりはないとも言っていた。

澪はベッドに横になって悩んだ。

もう解約されているのなら、この携帯電話は必要ないのではないか。

このまま、勝手に処分しても大丈夫だろうか。

ひびの入った画面に自分の顔が映る。

だけどこの携帯電話を返さなければ、彼はずっと前に進めないような気がする。

そう思った澪はベッドから起き上がり、すぐに外に出かける準備を始める。

クローゼットから取り出した小さな赤色の鞄に自分の財布と携帯電話、そして彼の携帯電話も入れた。