コンビニエンストアから200メートル離れたところに寂れたカラオケボックスがある。健二先輩とおれがよく出入りする場所でもあり、店員と顔見知りだった。


「例のあれちょうだい」

「了解。35番ね」


カウンターに立っていたその店員は素早く例のものを取り出して部屋に案内する際、健二先輩が履いていたジーパンのポケットの中にそれを突っ込んだ。

35番の部屋は角隅のところにあり、廊下で人が通って窓から見られる心配もない。

もっともおれたちが生まれる以前に建てられたここは客の入りは少なく、めったに人が通らないが万が一のこともあるため窓のカーテンを閉めておいた。

健二先輩はテーブルの上でそれらを広げると、口元をにやつかせながら作業を始めた。


「キョウもやるか」


おれは首を振った。

健二先輩はつまらなさそうに舌打ちをしたが、やがて待ち構えた快楽がやってくると自分の世界に入り込んでいった。

虚ろな目で、天井を見上げている。

おれは彼から目を背けるように部屋を出て廊下にある長椅子に腰掛けた。何度も見た光景とはいえいつまでたっても慣れることはなかった。

ふと弁当の入った袋が目に入って彼女のことを考えた。

彼女を思い浮かべることで今の現実から逃げられるような気がしてた。

でもそれは単なる現実逃避でしかなく、目の前の世界はなにも変わっちゃいなかった。

白黒はいつまでも白黒でしかなかった。

なにをやっているんだろう、おれは。

その日を境に、おれは健二先輩と会うことをやめた。