「なあ秋谷はどうしてる?」


ホームルームが始まっても奈美の席は空のままだった。それが気になったのかヨネは心配そうにしていた。

そういえば彼は奈美があの男のところに戻ったことを知らなかった。

黙々と黒板を消す日直の彼を手伝いながら澪はそのことを話した。


「じゃあ今、秋谷はあの男のところにいるんだ」


ヨネは肩を落としていった。


「秋谷はそんなにあの男が好きなんだな」


黒板消しを握りしめる彼の手に心なしか力が入っているように見えた。

奈美はずっと家にも帰ってないらしく携帯も繋がらないままだった。

どうしてるかきょうまで気がかりだったけれど、連絡が取れないのではどうすることもできなかった。


「とりあえず今は恭介がなんとかするって言ってたから信じて待ってることにしよう」

「そうだな」


するとちょうど恭介が教室に入ってくるところだった。

眠たそうな顔をして目を擦っていた。

彼が自分の席へと向かう際、ガチャンと音がしたのを聞いて澪は彼の元へ駆け寄った。


「恭介、ポケットから何か落ちたよ」


床下にあったのはシルバーの腕時計だった。