「ヨネ君は嘘をつかないこと私よく知ってるよ」


おれは大丈夫だよ。

先生。

先生。



でも、杏奈先生。

杏奈先生がいないこの世界がこんなに寂しいものだと思わなかった。

寂しくて。

寂しくて。

独りでいるのがどうしようもなく怖くて、杏奈先生がいた頃は幻を見ていたんじゃないかと思った。

幸せだった思い出がどんどん色褪せ、幻は消えてなくなり現実だけが世界をモノクロに映し出していく。

大好きだった人の繋がりを失っていくことがどんなに悲しいことなのか、おれはこの身をもって知った。

希望を失ったような、そんな感覚に陥るんだ。




先生。

初めて杏奈先生に嘘をついた。

おれは大丈夫なんかじゃない。

ちっとも大丈夫なんかじゃなかった。


先生。

先生。


おれは大丈夫じゃない。


もしおれの我が儘をひとつだけ聞いてもらえるのなら聞いてほしい。


先生。

戻ってきて。




お願いだから。


戻ってきて。





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