=ウサギくんとオオカミさん=



俺が海老名には手をあげないと思ったら大間違いだ。
海老名の襟元をグイッと掴み上げる。



「大神さんは、ウサギに酷いことしたって泣いたんだよ!」




それでも海老名はひるむことなくそう叫んだ。
は?酷いこと?




「なに言って…。別に、酷いことなんて何も…」

「自分のせいで、ウサギがあいつらに手をあげることになったって。せっかく、楽しかったのに自分のせいで台無しにしたって」

「…バカだろ」

「大神さんは、そういう子だよ。なに見てんだよ。なに勝手に被害妄想してんだよ!」



そういう子?
そんなの俺が知るわけもない。

だって、俺はあいつの事今まで知らなかった。
知ったのは、ついこの間あいつが好きだとか言って来たからで。


俺は、あいつのことなんか…。



「どうすればいいんだよ…。わかんねぇよ」

「わかれよ!謝ればいいんだろ!」



謝る?
俺が誰かに?
そんな事、したことねぇよ。