「姉ちゃん仕事行ってくるから、ちゃんと寝とくのよ」

「…わかってる」


雨に打たれたせいか俺は熱を出して寝込んでいた。
弱くて情けない。


あの日、茉侑と海老名に連れられアパートに戻ると、目を真っ赤にした姉ちゃんが迎えてくれた。


“心配したでしょ!”

そう言って俺を抱きしめて泣いた姉ちゃん。
ここにいてもいいのか、そう問うた俺に間髪入れずに当たり前だと答えた。



“ごめんね、自分が逃げたせいで凛に辛い思いさせてた後悔があって、引け目を感じてた。その引け目が凛に伝わってたんだね”


姉ちゃんはそう言って俺に謝った。
別に母親が俺にしてきたことは姉ちゃんのせいじゃない。
そんなこと、考えたことなんてなかった。


それを告げるとまた姉ちゃんは声をあげて泣いた。

ずっと、苦しんでいたのは姉ちゃんも同じだったのかもしれない。
俺が姉ちゃんに申し訳なく感じてるのと同じように姉ちゃんも…。