考え込んでいるとチャイムが鳴る。
痛む身体をゆっくりと起こし玄関に行くと、扉の向こうから聞き覚えのある声が聞こえてくる。



「凛くん?俺、蜂屋です!あけてもらっていいかな?」

「…はい」



姉ちゃんの会社の後輩の蜂屋さん。
姉ちゃんはまだ仕事で帰ってきていない。
なぜ?



「こんばんは…、あの、姉ちゃんはまだ仕事で」

「うん。知ってる。お姉さんがちょっと仕事が立て込んでて遅くなりそうなんだ。それで、代わりに夕食をお届けに」



そう言いながら掲げた袋には弁当が入っている様だった。
別にわざわざいいのに。
姉ちゃんの気遣いが、今は少し苦しい。



「食べきれなければ遺したらいいから。適当に買って来たから欲しいものだけ食べて」

「…ありがとうございます」



俺は素直にそれを受け取る。
ここで受け取る受け取らないのやり取りをするのは無意味だ。