「私の母親は、とても過保護というかまるで私を人形のように思っていたんだと思う」

「人形…」

「服はスカートしか許されなかったし、髪は肩より上に切ってもダメ。汚い言葉を使うのも、ただただ、母親の女の子としてこうあるべき姿を求められてた」




それがすごく息苦しかった。
心さんはそう言って苦しそうに机の上で組んでいた手を握りしめた。



「息苦しさを感じながらも、どうすることもできないまま月日が流れ私が9歳の頃…、凛が生まれた」

「変わらなかったんですか?」

「…そうね。私へのそれはまるで執着のようだった。凛の世話は、父もいたからちゃんとしていたと思うけれど、子ども心に愛情の傾きがあることは感じてた」



愛情の偏り…。
子ども自身がそう感じてしまうほど顕著だったんだろうか。



「凛は、母親の愛情を求めてた。でも、報われない凛を見て…、私は考えたの。私がいない方がお母さんの愛情は凛に向くかもしれない…。そう…」

「…」

「そんな事、あるわけないのに。ただ私が逃げたかっただけ…考えたらわかることだった」