「一瞬の出来事でよく見えなかったけど、凛はなんだか逃げ出そうとしている感じだった。俺たちが声をかけて一瞬凛がハッとしてこっちを見て、その瞬間女の人が掴みかかるようにしながら突き落とした…」

「事故…というよりは、故意に見えました…。突き飛ばしたって感じで…」

「……」



話すうち、心さんの顔色はみるみる青くなっていく。
頭を抱えるようにして俯き、じっと考え込んでいる様だった。



「まさか、こんな事になるなんて…。接触するなら、私の方だと思っていたのに……」

「え……?」




青ざめた顔で、心さんがそう言った。
心さんには、どこか思い当たることがあるんだろうか。





「あの、心さん。どういう事ですか?」

「犯人に心当たりがある…。でも、説明するには私たち家族の事を話さないといけなくなるの…」

「知りたいって言ったら、ダメですか?」

「……。そうね。凛もあなたたちの事は大切に思ってる。話しても、問題はないと思う。…場所を変えましょう」



心さんはそう言って顔をあげた。