「心は…!?心は、どこにいるの!」
「……は、はなせ…っ」
腕を掴まれ、揺さぶられる。
バク、バク、と心臓が煩い。
なんで、ここに。
どうして。
「心を返して!あの子だけが!あの子だけが私の大切な子!あんたが奪ったのよ!」
「やめ…やめろ!」
俺はその声から、その手から逃れようともがく。
グルグルと気持ち悪さが巡る。
見えてきた光さえ消えてしまいそうだ。
「待ちなさい!あんたのせいで!あんたが私から奪ったもの、返しなさい!返せっ!」
「俺はなにも、奪ってない!あんたが手放したんだ!」
そうだ。
俺のせいじゃない。
姉ちゃんだって、ずっとそう言ってた。
「やっぱり、あんたなんか!あんたなんか…うま…」
「凛?」
トゲトゲしい空気を切り裂いてくれる声。
ハッと顔を上げた瞬間、視界に入る海老名と大神の姿。
「お前ら…」
瞬間、ドンッと体に衝撃を覚え傾いていく世界。
バランスを立て直すことができないまま、俺は側の階段から真っ逆さまに……。

