「姉ちゃん」



朝。
会社に行く準備をしている姉ちゃんに声をかける。
髪を纏めていた手を止め振り返る姉ちゃん。




「なに?」

「あのさ、今度紹介したいやつがいる」

「え!?紹介したいやつって、なに?彼女?」

「…まぁ、そんなとこ」



本当は、言うつもりなんかなかった。
こっぱずかしいし。
でも。
思ったんだ。

俺がこうしてちゃんとまっとうに生きてるって知らせることが出来たら、姉ちゃんも自分の幸せに手が伸ばせるんじゃねぇかって。

姉ちゃんには、幸せになってほしい。
もっと自分の事を考えてほしい。

いくら俺が口で言ったって、どうしようもないのなら。
行動に起こしてやる。



「そう!そっか!嬉しい。楽しみにしてるね」

「…別に、楽しみにはしなくていい」

「どんな子?」

「今度連れて来た時でいいだろ!」