「あ?海老名じゃねぇか」

「…え」



夏休みに入って一週間。
やることもなくて暇で。
家にいても嫌なこと考えるばかりで。

むしゃくしゃした気持ちで家を飛び出して闇雲に散歩してた。
ハッとした時には、ずいぶん遠くまで来ていた。



「凛…」

「ああ。お前、何してんだ」




コンビニから出てきたらしい凛が、アイスを袋から取り出しながら聞く。
俺は、なんと答えたものかと考えながら凛を見た。



「えと…、散歩…?」

「なんで疑問形なんだ」

「いや…、なんとなく暇で家を出てきただけだから…。えと、凛は?」




なんとなく、気まずいと感じるのはあの電話のせいか。
過去に引き戻されたことで、必死に創り出した今の立ち位置もあやふやになったみたいで。