営業の社員が大半を占めるこの営業事務所では、日中所内に残るのは必然的に事務員である私と、所長の桧山さんという組み合わせが多い。

桧山所長はあまり気にしていないようだが、私の心の平穏のため、経費で何とか修理できないものだろうか。


「でも、今年はプリンター替えちゃったしなあ……予算、足りるかな」


ちらりと横目に映るのは、ピカピカの業務用プリンターだ。印刷の不具合が多かったことと、古い型でこれ以上は部品確保が難しいということで、遂に買い替えることになったのだった。

その、新型プリンターの印刷の早いこと!

液晶パネルの表示も分かりやすく、所内で大変好評となっている。
もちろん私だってそのひとりだ。紙詰まりを起こすこともなく、謎の機械音を発することもなく、手のかからない完璧なこの新入りには惚れ惚れしている。

ーーけれど、何だろうこの気持ちは。心の奥がどこか物足りないような、寂しい様な。


「……」


ちょうど必要な印刷物があったためパソコン画面の印刷ボタンをクリックし、立ち上がりプリンターの前まで移動する。
すべすべしたプリンターの丸い角を撫でて、そっと息を吐いた。


嫌でも思い出してしまうのは他でもない、佐々岡蒼という名前の、プリンター保守業者のサービスマンのことだ。