いつになく穏やかな目に、胸がいっぱいになった。小林さんは、いつだって私のことをしっかり受け止めてくれる。


「……明日は遅くまで寝て、その後デザートバイキングハシゴな」

「小林さん、完全に花より団子じゃないですか!」


こんな風に時折茶化してくるのは彼なりの優しさだと知っているけれど、突っ込まずにはいられない。

気付けばすっかり笑顔が戻っていた私を見て、小林さんはひとつ頷く。


「遅くならないうちに向かおう。浅見、車乗って」

「はい! 明日は私、小林さんよりスイーツ沢山食べますからね!」

「望むところだ」


私たちは距離が遠い分、人よりも絆を深めていく速度はゆっくりかもしれない。まだまだ、道の途中だ。時にちょっと、いやかなり寂しいと思うこともあるけれど。

今日見たカタクリの花のように、寂しさに耐えながら、優しく寄り添える関係を築いていきたいと心に刻んだ。



・・・おまけの5分後・・・


「あ、あの……小林さん。私、行きたいところがあるんですけど……」

「言わなくていい、分かってるから」


照れたように会話を切り上げてハンドルを握る小林さんと、完全に意味を理解されて真っ赤に染まる私との間には、衣料品店に着くまで一切の会話はなかった。



終わり