「あっ、小林さん! おはようございます」


小走りで駆け寄ると、彼の目元が少し緩んだ。私は彼の、こういうちょっとした表情の変化に弱い。


「おはよう」

「……」


ついでに、不意打ちの笑顔にも。


「ん? どうした?」

「やっぱり、小林さんだなあって……」


恥ずかしさを隠すために俯いて、小林さんが着ているシャツの袖をぎゅっと握る。
するとすぐ近くで、優しい声がした。


「それは……寂しかった、ってこと?」

「え、いや、別に!」


耳元で聞こえた声に驚いて顔を上げると、間近に顔が迫っていてパニックになった。とてつもなく会いたかったとは言え、この距離は心臓に悪い。


「浅見、顔真っ赤」


面白いものを見たと言わんばかりの表情で肩を震わせる小林さんに、私はつかんだままの袖を思いっきり引っ張った。


「ーー小林さんの、意地悪!」