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「ああそうだ、ライナ」


数日後、いつものように外出するため戸を開けかけたイルミスは、思い出したように振り返る。


「どうしました?」


名前を呼ばれてライナが近寄ると、イルミスはずいっと顔を近付けてきた。


「襟が曲がってしまったようです。助けてください」

「ま、またですか……?」


あれからずっとこの調子。
イルミスは新妻に襟を直してもらう行為がいたく気に入り、こうして曲がっているのかいないのか真偽不明なままライナに体を寄せてくるのだ。


「やはりライナに整えてもらうと気が引き締まりますね」

「……」


イルミスは、自分よりずっと背の低いライナが一生懸命背伸びをして襟元を直してくれる様子を間近で見ながら、満足そうに頬笑む。
それからしばらくの間、イルミスは出かける前にライナの前にやってきては、嬉しそうに首元を差し出すようになった。


果たして、これは二人の新しい日課として定着したのかどうかーー。



終わり