「無理、しないでくださいね」


心から心配そうな表情を見せると、イルミスは緩くかぶりを振った。


「心配には及びません。今の時期だけのことですから」

「でも……」

「それに、疲れている方が食事を味わって食べられます。――ああ、ライナのスープは本当に美味しいですね」


毎日見ているのに不思議だとライナはいつも思う。
イルミスの優しい視線を感じる度に、嬉しさと恥ずかしさで頭の中がごちゃごちゃになってしまうからだ。
今もこうして、目も合わせられずに俯いたまま自分に用意したパンをかじっている。
そんなライナを何も言わずににこにこと見守るイルミスの姿もまた、日課のようなものだった。

やがてイルミスは仕事へ向かうために立ち上がった。騎士団の所属は国となるため、王城に中央機関が備わっている。団員の士気も高めつつ、割り当てられた書類仕事もこなさねばならないのだ。また、予告無しに気まぐれな国王の相手も飛び入り参加することがあり、悩みの種でもあった。


「ライナは、今日は休みでしたね」

「はい」


普段は花を売るために市場へ出向くライナではあるが、今日のように定期的に休みを取るようにしている。