ひらひら舞う桜は、まるでファンファーレの時の紙吹雪みたいだなぁ。なんて思いながら桜並木をあるく。

他にはちっちゃい子がはしゃいでいたり、カップルが手を繋いで歩いてたりする。

傍から見たら、なんか可哀想な子。に見えるのかなぁ。

「はぁ。」

ふと、そばにあるベンチに腰をかけた。

「あれ?何これ・・・。本?」

そこのベンチの下にはとても古そうな本が落ちてた。表紙は・・・

「何も書かれてないや」

不思議に思い、本を開こうとした時。

「ご、ごめんなさい!その本、僕のです。」

小走り気味で近くまで来た男の子が言う。

「へ・・・あ、あぁ、ごめんなさい。どうぞ。」

「ありがとうございます・・・。」

あれ?さっきは結構元気そうに喋りかけてたのに。一気にボソボソ声になる。

「いえいえ。どういたしまして。」

「あ、あの・・・。隣、座っていいですか・・・?」

「あ、はい。よければ。どうぞ。」

「す、すみません。ありがとうございます・・・。」

・・・。なにこれ。めっちゃ話しかけずらい・・・。会話をかわしたかんじ、コミュニケーション苦手なほうなのかな?

「す、すみません。わざわざ拾ってもらったのに・・・。ここ、いいですよね。桜が綺麗に見れます。」

「あ、いえいえ。散歩の休憩してたところでしたし。そうですね。綺麗にみえますね。」

「ここ、僕の特等席なんです。嫌なことがあるとよくここに来て桜を眺めてるんです。」

「そうなんですね。あ、でも春以外は?花咲いてないし・・・。」

「いえ。ここに来てますよ。花は咲いてなくても、立派に伸び伸びしている木を見るだけでも心が落ち着きますし。」

「へー。私は・・・桜の花しか見てなかったなぁ。木なんてあんまり見ないし。」

「そうですね。普通の人は花しかみませんよ。僕もそうでした。でも最近、木にも魅力があることに気がついて・・・。」

「木に、魅力・・・ねぇ。」

正直に言って木に魅力なんてあるはずないのに。彼に言われて良く見てみると、鳥のとまり木になっていたり、花をいっぱいに付けている木も、逞しくて魅力があるのかもしれない。

「あ、ごめんなさい。そろそろ僕・・・行きますね。」

「あ、そっか。うん。ばいばい。」

彼は手を軽く降ると、来た道であろう方向にゆっくり、歩いていった。