この場合は『言葉の形を変え』と『日本ではなくローマで叫び』という二つで、日本語をローマ字に変えると判断したわけなのだが多分間違いはないと思う。

「そうなると日本語……つまり、ひらがなとか漢字をローマ字にするって事ですか?」
「多分、ね。まあ、それらしいのはそこにあるんだけど」

 俺の指差す先を見て「あっ」と小さく声を上げて近寄っていく律子ちゃん。

 俺が指差している先には高さもバラバラの観葉植物があり、それに掛けられた意味深なプレートだった。

「なんですか、これ?」
「それが分かれば苦労しないよ」
「ですね……すいません」

 シュンっと項垂れて観葉植物を見つめる律子ちゃんだが、必死になってプレートを見つめている。しかし、そのおかげで自分の事はお留守になっているようで、スカートが何とも困った事になっていた。

「先輩、これってアルファベットも混ざってますけど……これはどうしたらいいんでしょうか?」
「それはまだ分からないよ。とりあえず全部ローマ字に変換するのは手っ取り早いだろうね」
「分かりました! やってみますっ」

 一度振り返って気合の入った声でプレートに描かれている文字を声に出して読み始めた。観葉植物の方が律子ちゃんにとりあえずは任せておいて、俺はもう一つのヒントを解読する事にしよう。

「一〇本足のうしろ……くっ付いて?」

 この一〇本足っていうのはこの部屋で見る限り、先ほど律子ちゃんが発見したイカくらいしかないだろう。

 それに一般的な一〇足の生き物ってイカくらいしか思いつかないし。だが、『うしろをピッタリとくっ付け』というのは意味が分からない。何がうしろをピッタリとくっ付くのか? それらしいものなんて……。

「あっ……これか」

 それはイカに付いていた『いどう』と描かれた小さなプレート。

 これをイカに付けるって事か?

 元々はイカに付いていたのだから、今更それはないか。

 それにイカはもう調理されて醤油のいい香りがするダンシングフィーバー状態になって今はシンクで出番を待っている状態だ。