律子ちゃんのうしろに廻り込んだママッキーさんは、白衣のポケットからサイズ的には絶対に入らないと思う大きさの鏡(ほぼ全身鏡)を取り出して鏡を指差していた。その鏡に映っていたのはお尻の部分が完全に捲れ上がってパンツが丸見えになっている律子ちゃんのうしろ姿で、当の本人はまったく気付いていない様子だった。

「まあ、天然ですかね……よく、転びますし、それもいつもの事です」

 俺が鏡を指差すと、納得したように頷いたママッキーさんは――
「そうか。では次の研究テーマは『ドジっ子の行動心理――愛と羞恥に満ちた生き様を見届けた一八〇日間のドキュメント』にしようかな」
 ママッキーは新しいおもちゃを手に入れた……もとい、新しい研究テーマを手にいれたようでご満悦の表情を浮かべていた。

 ただ、サブタイトルと言うべきものには共感が出来ない部分が多々あったのは伏せておこう。

 「あっ、そうだ。和音ママは何処(いずこ)に?」
「和音さんなら今日は補習があるとかで来れないって」
「そっか、残念。折角、例のアレが完成したので持ってきたのに……私一人で楽しんで来るぞ」

 残念だと口で言いながらも、まったく顔が残念がってないママッキーさんは白衣のポケットに鏡を入れ始めた。


 ……そのポケットはどこに通じてますか?


 昔よく見ていたアニメに似たようなポケットがあったけどなと思いつつ見ていると、余程俺が不思議そうな顔をしていたのか――
「これ……多次元宇宙に通じている奇跡の白衣『ミラクルホワイトローブ』なのさね」
 誇らしげに白衣を脱いで俺に突き出していた。

 意味の分からない言葉を聞いて少しだけ頭がパニックになっている俺に何やら専門用語をふんだんに使った解説をしているママッキーさん。

 簡単に言えば物質を粒子状に再配列して元素の構造自体を書き換えて圧縮する装置を内蔵した白衣と言う事らしいのだが、その言葉が全て右から左へ通り過ぎていくような光景が目の前に広がっているのですが、俺はどうしたらベストなのでしょうか?