こうなると誰にも止められないママッキーさんの独壇場が始まり、ほぼ半日コースの商品説明会が開催されてしまう。

「顔はトモキンの写真を取り込んでシリコンで立体的に再現してみた。顔の表情はあくまでイメージで、トモキンの喜怒哀楽を仮定して開発を進めたが、トモキン的にはあっていると思うか?」
「……いや、自分の笑顔など知るはずもないでしょ」
「そんな事ではダメだぞ、トモキン。科学者を志す者は己の事も理解していなくて」

 いつ、俺は科学者を志すようになったのだろうか?

 一人で語り続けるママッキーさんを放置して俺は床で殺人事件ばりに酷い有り様で転がっている変態部長を足蹴にして起こし、こちらの騒ぎなど関係なく夢中でラジコンで遊んでいる律子ちゃんを呼んでママッキーさんを紹介した。

「あっ、始めまして。一年の梅津律子です、よろしくお願いします」
「ども。私は東山麻貴……ほおーっ、このクラブにも一年生が入ったさね」

 互いに顔を見合わせてお決まりの挨拶をしていたが、ママッキーさんの目が光ったかと思えば、律子ちゃんの身体を撫で回すようにうしろから前からじっくりと観察し始めた。


 ……また始まった。


 初対面で自分のセンサーに反応した人物に異常な興味を持って観察するママッキーさんの癖は今に始まった事ではない。俺も同じ事をされて「よし、合格」と意味不明な事を言われた事がある。

 これはママッキーさんの親愛の証みたいなもので、ここにいる全ての人は合格しているらしい。

 律子ちゃんはママッキーさんがいない間に入部したので今まで安全だったわけだが。

「はいはい……ママッキーさん、少し落ち着こうね」
「なあ、トモキン。この子はもしや天然ではないか?」

 いきなりそんな事を言い出したママッキーさんに少し驚いてしまったが、人間観察は極めると匂いや雰囲気で内面まで分かるものなのかと思った。

 だが、その考えはすぐに打ち消された。