「なあ、智子」
「……誰ですか、智子って」

 そんな騒ぎにまったく動じる事もなく、気だるそうに俺を手招きする和音さん。

 テーブルの上には制服から溢れそうになったマスクメロンが少し形を変えてボヨンと瑞々しく揺れていた。

「智樹、私の胸を好きなだけ見ていいから、御飯作ってよー」

 俺の視線に気付いたのか、誘うように動く和音さんに合わせて、右へぷるんぷるん、左へぷるるん。

 ……うむ、ゼリーみたいだ。

「俺は和音さんの家政婦ではありません。ついでにメイドでも執事でもありませんので、あしからず」
「そんな事言わずに智樹の手料理が食べたいんだよ。料理得意だろ? 朝から何も食べてないから力が出ないんだよね。ほら、作ってよお」

 何故、俺の手料理が食べたいのかはさておいて、いつもながら唐突な話をする人だ。
 時刻は放課後を一時間ほど廻り、程よく小腹も空いてきた午後四時。

「無理ですって……大体、ここは部室で料理の材料なんてどこにあるんですか? それに調理道具もどうやって……ん?」

 朝から何も食べていないとなると、胃の中は空っぽで胃酸が出過ぎて気持ち悪い事になっているだろう。と、そんな事はどうでもいいか。色々と間違いを正そうとしたが、そこに俺の想像を超えた間違いだらけの人が入っていた。

「お、お待たせしま……わ、ととっ――へにゃっ」

 ビタンっと豪快な音をさせて床に前のめりに倒れこんだ女の子は、相変わらずのパンツ丸見え状態からすぐに律子ちゃんだと判断がとれるわけだが……床に散乱した白菜、ナス、キュウリ、糸こんにゃくなど等、この物体達は何だろうか?

「あ、ああっ……鍋の具材が」
「……はい?」
「律子、一辺に持ってくるからだぞ。多かったら電話しろってあれほど言ったのに」

 俺の事など無視して床に倒れている律子ちゃんを起こしにかかった和音さん。

 床に散らかっている物体を拾うフリをしながらも、しっかりと律子ちゃんの胸やお尻を擦りながら「ちょうちんブルマ」と叫んで遊んでいる辺り、それほど心配しているようには見えないがとんでもない事を言ったよな?