現在の俺は女子の制服を着て胸にはパットを入れ(形から入るので下着も女性ものを着用)、ウイッグと薄く化粧(和音さんが喜んでしてくれた)をしている。

 声に関しては声変わりをしても女性のような声なので、見た目が完璧ならバレる心配はなく、決してニューハーフには見えないから俺としては複雑なのであるが。

 そして、その辺にいる女の子には敵わないほどの色気を醸し出せているのも複雑で微妙なんだけど。

 母上よ、何故もっと男前に産んでくれなかったのですか? 俺に女形でもしろと言うのですか。


「ほ、本当に……伏峰先輩、ですか?」
「そうだよ」

 不思議そうに俺の顔を見つめる律子ちゃんにとびっきりの笑顔で応えると、顔を真っ赤にして俯いてしまった。中々面白い反応だがここで遊んでいても仕方ない。

「律子ちゃん、私がこの格好のときは『智美(ともみ)』って呼んでね。くれぐれも苗字は呼んじゃ駄目よ? 呼んだら……分かってるわね」
「え、あ……ひゃああっ」

 手をかざして空を切るように横に動かすと、驚いて数歩後退(あとずさ)った律子ちゃんは、そのままバク転でもするかのような勢いで尻餅をついていた。

 何をそんなに驚く必要があるのかは知らないけど、さすがは律子ちゃん……中々面白い反応をしてくれるね。

「大丈夫? 律子ちゃん」
「は、はい」
「大丈夫よ。誰も食べたりはしないから」

 俺が手を差し出すと律子ちゃんは戸惑ったような顔をして俺の手を掴んできたが、俺の言葉に驚いて手を掴んだまま固まってしまった。