「そ、そうなんですけど……今年度に認可した部活動の数が、えっと……あまりにも多すぎまして」
「もしかして、それで予算が足りないって言うんじゃないだろうね」
小さく申し訳なそうに頷く生徒会長に「がおっ」と吼える和音さんを止める事は最早不可能に近い。
やっている事は恫喝に近いのだけど――
「それは生徒会の失態だろ? 何も考えずに次々と認可した結果、今度は予算が足りないから潰すって、ふざけるんじゃないよっ」
言っている事はとても正論だった。
「は、廃部になっちゃうんですかっ?」
「それは何と言うか困ったね。一応は私もこの部の人間だし、愛着はそれなりにある」
目に涙をいっぱい溜めた律子ちゃんと憮然とした表情ながらも納得出来てない様子のママッキーさん。二人も生徒会長に話を聞いたあとで連絡をとったのでこの場にいるわけで、部長は俺が帰ってきたら普通にお茶を飲んでいた。相変わらず行動パターンが読めない人だよ。
「まあ、二人共落ち着いて。それよりもまずは服を着ようね」
「え……あ、えっ? あわわっ、きゃー!」
そう言われて我に返ったように自分の姿を確認して瞬く間に顔を真っ赤にした律子ちゃんは、窓ガラスを揺らす超音波並の悲鳴を上げて部室を飛び出していった。そのあとを「待っておくれよ、リッコ―」とマイペースでとぼけた調子で駆け出して行ったママッキーさんだったが未だに上半身が素っ裸だった。
「何っ? 水着――って、水着はどこ? ともちゃんっ」
二人が出て行って数秒経ってから辺りを見渡している部長は俺を見上げて「水着、水着」と呪文のように唱えていた。
そう言えば二人が部室に入ってきたときもまったく眼中にないように生徒会長の話に聞き入っていたから、今の話がどれほど部長にショックを与えていたのかが窺い知れる。
「こいつもかなり動揺しているみたいだね。ふーっ……話進める前に智樹も着替えておいで」
「……そうですね」
どうやら俺も部長と同じで動揺しているようで、メイド服を着ていたのをすっかり忘れていた。