「そのときって、すでに何かする気満々の目をしてますね?」
「バレた? 一応は犯人の目星がついているから、スモークしようと思ってねえ」
「手加減してやってください」

 一応注意喚起はしておかないとこの人は全力でやるし、その後始末を平気でこちらに押し付けてくるからな。 
 ちなみに『スモーク』っていうのは犯人を煙で追い込み、燻(いぶ)り出す事を指しているママッキーさん独特の言い回しで、この他にも『スモークチップ』というのがあるが、これは出来れば使って欲しくないものだ。

「大丈夫だって。赤色時雨(あかいろしぐれ)と蒼槍五月雨(あおやりさみだれ)は調節中で使えないし」
「当たり前です。その二つで校舎が半壊して、先生達にどれだけ怒られた事か……それにママッキーさんは停学にもなったんですよ」
「そうだったかなあ……覚えてないや」

 本気で覚えてない様子のママッキーさんは首を傾げているが、研究以外の事には頭が廻らないようだ。
 この『赤蒼爆撃(せきそうばくげき)校舎半壊事件』と名付けられた事件は、特訓部の事件から更に三ヶ月後の事で、そのときは先生達も呆然として事の顛末を見届けていた。

 そのときにはママッキーさんはすでに電脳革命クラブから飛び出して色々な部活を点々として研究を繰り返し、その研究成果を発表すると言って俺達の前で実験をしたときに起こった事故なのだ。

 当然、先生達も俺達の心配をしていたが、実験の責任者はママッキーさんと言う事で俺達は無罪で、ママッキーさんはそれから二週間の停学処分となった。しかし停学中も気付けば学園の中にいてその度に先生につまみ出されていたが、何度も繰り返している内に先生の方が諦めて、結局うやむやの内に停学処分は解けていた。
 それくらい研究馬鹿なママッキーさんなのだから、自分の研究しているものが他人に使われるのは嫌なものだと言うのは分かる。
 一般人レベルに置き換えれば、苺のショートケーキの苺だけを食べられるようなものだ……ちょっと違うかも知れないけど、悔しい気持ちは一緒だろう。