「本物、か?」
「え? 本物って……」
「まあ、そんな事あるわけないか。多分、ママッキーさんが作ったあの機械が誤作動でもしたのだろう」

 律子ちゃんは不思議そうな顔をしていたので、ママッキーさんの発明した立体映像投影装置を説明すると納得したように何度も頷いていた。

 その装置が何らかの誤作動をしたと考えるのが一番筋が通っているし、穏便に解決するってものだ。

「誤作動とは失礼さね、トモキン」

 しかし、俺の考えを簡単に打ち砕く声が部室内に響いていた。

「マトリクサーキットは正常に作動をしていたから問題はない。それにあそこは磁場が安定しない特殊な場所だと教えたけど? 私としては現時点ではあそこで何があったのかを断言するのは避けるけど、素直に事実を認めるのも一つの解決法だと思うけどね」
「非科学的な現象を認めろっていう科学者も珍しいですよ」
「私は超常現象もオカルトも信じてるし、いつかは幽霊と話が出来る機械を作りたいと思っているのだよ、トモキン君」

 人の探偵の助手みたいに呼ばないで欲しい。

 しかし、幽霊を信じるマッドサイエンティストっていうのもある意味貴重で不気味だな。どっちも俗世からは掛け離れた存在だし、似た者同士だし。

「あ、あの……東山先輩」

 俺達の会話を静かに聞いていた律子ちゃんが片手を上げて何かを言いたそうな顔をしていた。

「ん? なんの用かね、リッコー。私の事はママッキーと呼ぶよろし」
「え、あ……は、はい」

 そこに妙なあだ名をつけて満足げに微笑むママッキーさんも律子ちゃんの様子が違う事には気づいたようだったが、徐(おもむろ)に律子ちゃんのうしろに立ったかと思えば――
「必殺、スカートおろしっ」
 スカートをいきなり下ろしていた。


 ……アホだ。


 スカートめくりなら話は分かるのだが、何故に下ろす必要があるのだろうか? それもパンツまで脱がしそうな勢いだったのに驚いた。

 そんなわけで悲鳴と笑い声、そして何故か俺には罵声が降り注ぎ、二人が何やら言い合っているのが聞こえるので終わるまでの間暫し待つとしましょうかね。