「コハル……やっぱり駄目か」
「私は超常現象とかオカルトは信じない主義なの。こ、こんな……ひゃうっ」

 少しだけ顔を動かしたコハルだったが、視界に部長の顔が入ったようですぐに下を向いて震えだした。そんなコハルを見て面白そうに笑う和音さんはお腹を抱えて苦しそうだった。


 ……性格悪いな。


 今に始まった事ではないが和音さんも新しい遊び道具を見つけたらトコトン遊ぶ人だからね。壊さないようにお願いしますね……一応は俺の血縁なので。

「で、結局のところ……何故、七不思議なのですか?」
「だって面白そうだから」

 理由になってないですよ、部長。

「ほら、この学園って七不思議が五つしかないの知ってるでしょ」
「……そう言われてみれば、そうですね」
「でね。この度六つ目の不思議が発見されたのですっ」

 どこからともなくファンファーレが鳴り響き、紙吹雪が舞っている中、部長は胸を逸らして誇らしげにしていた。


 ……用意がいい事。


 ファンファーレは部長が用意していたラジカセで、紙吹雪は無理やり押し付けられたコハルが嫌々投げていたが、六つ目の不思議ってなんだ? 確かに今まで五つしか不思議は存在しなくて変だとは思っていたけど、それにも意味があると思っていた。

 実は『七不思議なのに五つしかない不思議』みたいな……ごめんなさい、自分で言っていて恥かしくなりました。

「それで、部長はその不思議を知りたいわけですね?」
「うん! 『怪奇、一本松の祟り』っていう不思議らしいよ」

 目をキラキラと子供のように輝かせる部長がとてもうっとうしく感じるが、ここで一つ疑問が生まれた。

「この学園に松なんてありましたか?」
「あるよ。中庭に切り株だけ残ってるけど、あれが噂の松なんだよね」

 いつ噂になったのかは知らないが、中庭のほぼ中央に切り株だけになった樹木があるのは知っている。それもご丁寧に金網で囲まれて入れないようになっており、上には有刺鉄線まで張り巡らせる念の入れようである。

「でね、あの松が――」
「一本松の噂はデマに決まってるだろ」

 急に話に割って入ってきた和音さんに俺と部長は顔を向けたが、語気に圧倒されて言葉を失っていた。