「ところで、智樹」
「なんですか? 副部長」
「その『副部長』っていうのは止めてくれないか? 前は『かずちゃん、ともちゃん』と呼ぶ仲だったではないか」
「…………呼んだ事も呼ばれた事もありませんよ、一度も」
恥ずかしそうに顔を赤く染めていた副部長だったが、小さく「ちっ」と舌打ちをして――
「副部長って面白くないんだよねえ。せめて和音って呼んで欲しいな、智樹ちゃん」
拗ねたような声を出して俺の頬を突付いていた。
「気色悪い声を出さないでください。では、千歩譲って……『和音さん』と呼びましょう」
「千歩、ね……。ほんと、智樹っておかしな性格してるよね」
「これは性分ですから、ほっといてください」
楽しげに俺の頬を突付いている副部長――和音さん。
確かに一年前は俺は新入生で和音さんは二年生だった。
そのときは『桜井先輩』と呼んでいたが、進級して副部長に昇進したのでそれを期に呼び方を変えたまでの話だ。ちなみに部長は『変態先輩』と呼んでいたが、嬉々として喜んでいたので問題はないだろう。
今ではその変態っぷりに拍車が掛かっている気がするけど、気にしない事にしている。
「お待たせしました」
ちょうど話が一段落ついたところで律子ちゃんが珈琲カップが載ったトレイを持ってやって来た。
「ありがとう」
「いえ、熱いですから気をつけてくださいね、桜井先輩」
テーブルに珈琲カップを置いて一礼して和音さんの方へ歩いていく律子ちゃん。
その優雅に歩いていく後ろ姿から滲み出ているのはメイド長もびっくりの凄腕メイドオーラだった。
いや、別に俺もメイドには詳しくないけど、なんかそんな感じがしたので思ってみた。でも、律子ちゃんがメイドになったらさぞかし大変だろう……ご主人様は。
「おっ、いい匂いだな。さすがは律子の淹れる珈琲は香りからして違うね」
嬉しそうに珈琲カップを受け取ると冷ますのも面倒臭そうに一口啜っていた。
「なんですか? 副部長」
「その『副部長』っていうのは止めてくれないか? 前は『かずちゃん、ともちゃん』と呼ぶ仲だったではないか」
「…………呼んだ事も呼ばれた事もありませんよ、一度も」
恥ずかしそうに顔を赤く染めていた副部長だったが、小さく「ちっ」と舌打ちをして――
「副部長って面白くないんだよねえ。せめて和音って呼んで欲しいな、智樹ちゃん」
拗ねたような声を出して俺の頬を突付いていた。
「気色悪い声を出さないでください。では、千歩譲って……『和音さん』と呼びましょう」
「千歩、ね……。ほんと、智樹っておかしな性格してるよね」
「これは性分ですから、ほっといてください」
楽しげに俺の頬を突付いている副部長――和音さん。
確かに一年前は俺は新入生で和音さんは二年生だった。
そのときは『桜井先輩』と呼んでいたが、進級して副部長に昇進したのでそれを期に呼び方を変えたまでの話だ。ちなみに部長は『変態先輩』と呼んでいたが、嬉々として喜んでいたので問題はないだろう。
今ではその変態っぷりに拍車が掛かっている気がするけど、気にしない事にしている。
「お待たせしました」
ちょうど話が一段落ついたところで律子ちゃんが珈琲カップが載ったトレイを持ってやって来た。
「ありがとう」
「いえ、熱いですから気をつけてくださいね、桜井先輩」
テーブルに珈琲カップを置いて一礼して和音さんの方へ歩いていく律子ちゃん。
その優雅に歩いていく後ろ姿から滲み出ているのはメイド長もびっくりの凄腕メイドオーラだった。
いや、別に俺もメイドには詳しくないけど、なんかそんな感じがしたので思ってみた。でも、律子ちゃんがメイドになったらさぞかし大変だろう……ご主人様は。
「おっ、いい匂いだな。さすがは律子の淹れる珈琲は香りからして違うね」
嬉しそうに珈琲カップを受け取ると冷ますのも面倒臭そうに一口啜っていた。


