「馬鹿、馬鹿って……誰が馬鹿ですって、天才娘っ」
「……あんた」
「むきーっ、天才娘に言われたくないですわっ」
けなしているのか、誉めているのか、どっちなのか分からない副生徒会長に悲しそうな瞳で首を振るコハル。
コハルの気持ちは分かるがこの馬鹿娘を今更どうこうするのは無理な話である。
筋金入りで国宝級の馬鹿だから何を言っても無駄だろうけど、よく考えてみれば扉は壊されてもう無いし、このままほったらかしにして帰ろう。
何やら言い争いを続けるコハルと馬鹿娘を置いといて俺は部屋の外へと出ようと一歩を踏み出した。
「こおら! 華子っ」
だが、それは敵わなかった。
部屋から出る唯一の出入り口を塞ぐように仁王立ちになっている一人の鬼が、全身からどす黒いオーラのようにユラユラと殺気を放ち、一歩一歩ゆっくりとした足取りでこちらへ歩いてくる。
……オーマイゴット。
確実に人を殺(や)りますって顔で近づいてくる鬼――和音さんに今近づくのはかなり危険なのは誰の目にも明らかだろう。
ここは誰かに犠牲になってもらうのが一番だが、ターゲットは副生徒会長だからそのままでいいか。
「せ、先輩っ――桜井先輩が犯罪者にっ」
「まだなってないから」
混乱した様子の律子ちゃんが俺に抱きついて来たが、目ざとくコハルがそれを見つけるとギラっと睨みを効かせてきた。
そんな俺達の会話などまったく聞こえてない様子の和音さんは、副生徒会長の前で腰に手を当てて鼻息を大きく振り撒いていた。
まずいな……このままでは本当に犯罪者を作ってしまうかも知れない。
馬鹿娘から遅れる事数秒、呑気に手を振りながら入ってきたこの人を犠牲にして事なきを得たいところだが、果たして役に立つのかはかなり微妙なところである。
「部長、出番です」
「あっ……やっと僕の存在に気付いてくれたんだね、ともちゃ――え、あ……あのーっ」
「和音さん、サンドバックです」
何か言っていた部長の頭を掴み、そのまま持ち上げて和音さんに向かって投げた。
「……あんた」
「むきーっ、天才娘に言われたくないですわっ」
けなしているのか、誉めているのか、どっちなのか分からない副生徒会長に悲しそうな瞳で首を振るコハル。
コハルの気持ちは分かるがこの馬鹿娘を今更どうこうするのは無理な話である。
筋金入りで国宝級の馬鹿だから何を言っても無駄だろうけど、よく考えてみれば扉は壊されてもう無いし、このままほったらかしにして帰ろう。
何やら言い争いを続けるコハルと馬鹿娘を置いといて俺は部屋の外へと出ようと一歩を踏み出した。
「こおら! 華子っ」
だが、それは敵わなかった。
部屋から出る唯一の出入り口を塞ぐように仁王立ちになっている一人の鬼が、全身からどす黒いオーラのようにユラユラと殺気を放ち、一歩一歩ゆっくりとした足取りでこちらへ歩いてくる。
……オーマイゴット。
確実に人を殺(や)りますって顔で近づいてくる鬼――和音さんに今近づくのはかなり危険なのは誰の目にも明らかだろう。
ここは誰かに犠牲になってもらうのが一番だが、ターゲットは副生徒会長だからそのままでいいか。
「せ、先輩っ――桜井先輩が犯罪者にっ」
「まだなってないから」
混乱した様子の律子ちゃんが俺に抱きついて来たが、目ざとくコハルがそれを見つけるとギラっと睨みを効かせてきた。
そんな俺達の会話などまったく聞こえてない様子の和音さんは、副生徒会長の前で腰に手を当てて鼻息を大きく振り撒いていた。
まずいな……このままでは本当に犯罪者を作ってしまうかも知れない。
馬鹿娘から遅れる事数秒、呑気に手を振りながら入ってきたこの人を犠牲にして事なきを得たいところだが、果たして役に立つのかはかなり微妙なところである。
「部長、出番です」
「あっ……やっと僕の存在に気付いてくれたんだね、ともちゃ――え、あ……あのーっ」
「和音さん、サンドバックです」
何か言っていた部長の頭を掴み、そのまま持ち上げて和音さんに向かって投げた。


