「まあ、重さに関しては今のところは考えないようにしよう」

 考えても分からない事は後回しにして、とりあえずは目に見えているものを解決していく。

 何とか律子ちゃんと頑張って観葉植物を動かし終えて見てみると、観葉植物はある形を表していた。

「これが『携帯の電波』ですか?」

 並び替えられた観葉植物は携帯の電波状況を表し、見事に三本のアンテナが立っていた。

「そうだろうね。でも、これが何を表しているのかを解読しないと――」

 観葉植物を眺めていた律子ちゃんが振り返り、俺もソファへと戻ろうとしたところで、突然電話のベルが鳴り響いた。

「きゃあっ……び、びっくりしたあ」
「心臓に悪いな、これ」

 鳴っているのはテーブルの上に置かれた黒電話が、年配の人には懐かしく、若い人には新鮮な独特のベルを響かせている。

 驚いて胸を押さえている律子ちゃんと顔を見合わせ、俺は意を決して黒電話に手を伸ばした。

 だが、そこで俺はおかしな事に気付いた。

「なんでこの電話が鳴っているんだ?」
「……え?」
「いや、この電話……電源も電話線も繋がっていないんだよ」

 そう言って黒電話を指差した俺に律子ちゃんは目を丸くして更に驚いたような顔をしていた。

 さすがの俺もこの鳴り止まない黒電話には少々驚きを隠せないが、電話に出ないと先に進まないようだ。

 律子ちゃんは俺の腕にしがみ付いて「ゆ、幽霊さんだっ」と震えていた。

 そんな律子ちゃんを落ち着かせて恐る恐る受話器を取り上げて耳に当てると――
『こんばんわ、トモ兄ちゃん』
 向こうから少し力の入った挑発的な声が聞こえてきた。